元国税不服審判所の税理士

今日は今年7月迄国税不服審判所に4年在籍していた税理士が講師のセミナーに出席した。
内部で経験した事を外部の視点で話し、すごくためになった。
平成19年から税理士・弁護士等の民間人の審判官採用がはじまり、平成25年には50人にして審判官の2人に1人は民間人にするそうである。
ちょうど裁判員制度のように日常感覚や常識といったものを反映するとともに、国民の理解の増進とその信頼の向上を図ろうというものだろう。
この方向性はすばらしいと思った。
しかし、まだ国税不服審判所は国税局と別の独立組織でなく横線で繋がった特別機関だから、完璧とは言えない。

本日の講演で特に勉強になったのが、国税不服審判所は違法な処分の枠組みを超えて不当な処分かどうかを裁決できる機能があるという点である。
国税不服審判所の裁決に不服がある場合は6ケ月以内に原処分取消訴訟を地方裁判所に提訴できるが、そこでは違法か適法かの法律面の争いになる。
不服申立て手続きでは、審判所の判断で「不当の処分」に対しても救済の可能性が与えられているのである。
それも裁判のように費用と時間かけずに無償でmax1年だから、泣き寝入りせず、堂々と不服審判所に審査請求したほうがよい。

例えば、修正申告を出せば納税者が非を認めた事になるので、審査請求の前段階の税務署長に対する異議申立ても出来ないが、重加算税をかけられた場合に、その部分については審査請求できる。
現に最近の裁決書に、「・・仮装隠蔽の確定的な意図があったと推認することまではできず・・重加算税を賦課することは適当でない・・」と重加算税部分については取消処分になっている。

不当処分判断という機能は以前から審判所にあっても狭く解釈していたのが、民間人の採用により偏らず常識的な裁決になっていくと予想されるのがすばらしい。
以前のブログで記載した「国税不服審判所 審査請求」の件を本日の講師に質問したら、「不当行為でしょうね」と、人・時代によって判断が変わっていくものだと思った。
先の事例のように仮装隠蔽の意図がないのに重加算税は不当と同様、毎月返済事実と意思があり納付計画書も提出しているのに、問答無用でいきなり差し押さえは不当と言わざるを得ない。
まるで、スピード違反で止まった運転手にいきなり発砲のようだと言えば言い過ぎかも知れないが、職権を持った者による処分に対し公平中立な裁決できる新しい国税不服審判所に改革していきそうに感じて有意義なセミナーであった。

 

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