請求締切から月末迄の消費税処理

販売管理システム「ふくろう販売」を新規導入したばかりの顧客から以下の質問があった。
20日締切の得意先で請求時一括消費税計算しているが、①月末に21日~末日迄の売上合計に税率を乗じた消費税を加算して売掛金残高一覧表を、前のシステムでは行っていた。
販売管理システム「ふくろう販売」では、②「調整税出力」で21日~末日の売上明細に税率を乗じた消費税を合計した税額を加算して売掛金残高一覧表を出力しているが、端数の関係で若干誤差が生じる。
今迄、会計事務所で前のシステムで出力した売掛金残高一覧表をみせて試算表作成してもらっているので、同じように修正できないかというものである。

例示すると、
A得意先(20日請求締切)の売上
1/21~1/末 1,000
2/01~2/20 2,000  請求時一括税=(1,000+2,000)×5%=150
2/21  no=21  750
2/25   no=25  950
入金無しとすると、2月末日の売掛残高は、1,000+2,000+150+750+950=4,850
これに2/21~末迄の売上に対する消費税を求めると、
①(750+950)×5%=85
②750×5%+950×5%=37+47=84 (切捨ての場合、端数処理は得意先別に選択可)
となり、四捨五入又は円未満切捨てた分の合計が異なる。
その結果、①は4,850+85=4,935円、②は4,850+84=4,934円となる。

プログラムの修正できなくはないが、そのメリットと工数考えると後者の方があまりにも大きいので、何が正しいのですかと開発者から相談があった。

元々会計事務所で消費税申告計算する場合は、年間の課税売上を基に計算するので個々のΣ得意先の消費税やΣ伝票の消費税を課税売上として積上げる事はしていない。
Σ得意先の消費税やΣ伝票の消費税と課税売上を基に計算した消費税とは、上記例と同様、端数処理の関係で一致しない。
仮受消費税-仮払消費税=未払消費税で期末計上するが、殆ど納付消費税と差額が生じるので、未払消費税と納付消費税の差額は雑損失や雑収入で処理している。
そういうものなので、あまり目くじらたてて端数処理をどうするかする程の問題ではないと説明をした。

継続適用しているなら、どちらも正しいのではないかとその場で回答はしたが、消費税法ではどちらが妥当としているのかによって、顧客の強い要望に対処できると思い、調べてみた。

◆個別計上(積上げ)方式・期末一括方式(税抜経理)
税込経理の場合は一事業年度分を一括して処理することになるが、税抜経理の場合は取引の都度消費税を別途計上するか、期末に一括して計上するかを選択することができる。
個別計上(積上げ)方式は、「決済の際に受領すべき金額について1円未満の端数を処理」する方式(端数処理の特例:旧消費税法施行規則22条第1項)だから、端数の切捨てあるいは切上げが累積される。
一事業年度の取引数が多い場合は期末一括方式に較べ、相当の金額誤差が生じる。
この積上げ方式は、総額表示の義務化(平成16年4月1日)により、全て税込価格で計算されるため、税抜価格で表示されている場合の端数処理という問題は生じないことになりこの規定は廃止された。
しかし、事業者間取引など総額表示義務の対象とならない取引は、税抜価格を前提とした端数処理の特例の適用が当分の間認められる。
したがって、請求締切日以降決算日迄の売上に対する消費税は計上しなければいけないが、個別計上でも一括でもよい。

◆消費税法第28条
第28条 課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額とする。
この条文からすると、納品した時点で消費税は発生すると読み取れる。
以前のブログ「一定期間分の取引のまとめ記載」で税務署と確認した内容にもあるように、請求時一括計算で確定した消費税で申告はNG、決算日までの納品分の消費税も加算しなければいけない。

◆請求書発行時の消費税は確定債権で端数処理はいけないが、締切後~月末の未請求期間の取引については、「納品した時点で消費税は発生する」ということなので、
Σ納品書ベースで消費税計算(すなわち調整税)が消費税法第28条からみて妥当ではないかと思う。
売上伝票毎税計算の積上げが本来の方法で、本体価格合計に税率を乗じる請求時一括消費税計算は簡便的な方法として位置づけられるのかもしれない。

一応、修正が嫌でしないのではなく、理論武装はできたかなと思う。

 

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