前受請求書とインボイス

ふくろう建機レンタルシステムを導入している顧客から、見積書にも適格請求書発行事業者登録番号を表示したいという要望があった。
挿入するのは保守料内のサポートで可能だが、目的は何か聞き出すようにと指示した。
すると、都度取引の顧客が多く、見積書を請求書の代わりに使用したいためだと言う。
見積書を見てすぐに振り込んでくるので、前受請求書のような処理となっている。
通常の見積書は取引前の見積りを示す書類であり、登録番号を追加しただけでインボイスになるわけではない。単にタイトルを「請求書」に変更すればよいという問題でもない。 全体会議でケーススタディとしてこの問題を取り上げた。
以下は、その説明及び対応方針である。

①消費税上の課税売上の計上時期は、原則として資産の引渡しや役務の提供を行った時点
 (なお、課税売上の計上時期とは別に 、例えばシステム保守料を1年分前受けする場合、役務提供前の前受請求時点でインボイスを発行することもできる )

消費税とインボイス
インボイスは売手が買手に正確な適用税率・消費税額等を伝えるためのもの。買手は原則として帳簿と適格請求書等を保存することで仕入税額控除を受ける。

インボイスの記載事項
  従来の請求書に売手の名称、取引年月日、取引内容、取引先名等が記載されていることを前提に、
「登録番号」「税率ごとに区分して合計した対価の額及び適用税率」「税率ごとの消費税額等」を追加する。  

④「ふくろう販売管理システム」(以下当社システム)における通常の前受請求書の取扱い
  ・前受金を受領したこと自体は、その時点で課税資産の譲渡等が行われたことにはならず、原則として消費税の売上計上時期とはならない。
・当社システム上、通常の前受請求書は売上データではなく、会計連動する売上データも発生しない。
・前受入金後、納品・役務提供時に売上計上し、この時点で会計データ及び売上統計に反映する。
・納品書等にインボイスの必要事項を記載することにより、当該帳票をインボイスとすることができる。  
  ・したがって、当社システムでは原則として通常の前受請求書をインボイス発行対象外とし、納品・役務提供時の売上帳票をインボイスとする運用を標準とする。  
・なお、前受請求時点でインボイスを発行した後、実際の納品・役務提供時に金額等の記載事項に変更が生じた場合は、修正したインボイスを発行する必要がある。
・前受請求書をインボイスとする必要がある場合は個別対応とする。
 ※インボイスの写し及び電子取引データの保存要件との整合性に注意
 ※前受請求書をインボイスとして発行した場合は、後日の納品書等に「前受請求書にてインボイス発行済み」等を記載し、どのインボイスに対応する取引かを明確にして、二重計上を防止する。

⑤ 定期売上オプションと前受請求書のインボイス
 「ふくろう販売」の「定期売上オプション」は、年間保守料やシステム利用料など、契約に基づく定期的な売上を自動計上する機能。前受請求を選択した場合は、契約額を先に請求し、その後、契約内容に従って売上を計上する。

・契約期間が1年以内の場合
 システム保守料などを1年分前受けする場合でも、必要な記載事項を満たしていれば、役務提供前の前受請求書をインボイスとして発行することができる。
 ただし、前受請求書をインボイスとして発行することと、消費税上の課税売上を計上する時期は別の問題である。
 インボイスは将来行う取引についても一定の条件を満たせば役務提供前に発行できるが、課税売上は原則として実際に資産の引渡しや役務の提供を行った時点で計上する。 したがって、前受請求書をインボイスとして発行したからといって、その時点で前受金全額を課税売上として計上するわけではない。

・契約期間が1年を超える場合
 1年を超える契約でも、前受請求書をインボイスにできないわけではない。
 国税庁Q&A問77-3では、継続的な保守契約などについて、売手が対象期間を通じて適格請求書発行事業者であるなど一定の条件を満たせば、複数の課税期間にまたがる期間をまとめて一つのインボイスとして発行することも認められている。
 ただし、課税期間ごとに区分してインボイスを発行するのが原則であり、複数の課税期間をまとめて発行する場合、当期分の消費税額等が明確に区分されていなければ、売手は売上税額の積上げ計算を行うことができない。

・複数年契約での実務上の対応
 複数年契約の場合、前受請求書だけですべてのインボイス記載事項を満たす必要はない。
 例えば、契約書に「契約期間・役務内容・契約金額」等を記載し、前受請求書に「登録番号・適用税率・消費税額等」を記載するなど、契約書と前受請求書の相互の関連を明確にしておけば、両方の書類を合わせてインボイスの記載事項を満たすことも可能である。
 実務上は、前受請求書に「〇年〇月〇日付保守契約書に基づく」など契約書を特定できる記載を入れ、契約書と前受請求書をセットで保存できるようにしておくことが望ましい。
 また、複数年分をまとめてインボイスとする場合は、できれば課税期間ごとの対象期間・金額・消費税額を区分して表示しておく方が、売手・買手双方の消費税処理が分かりやすい。
 契約金額や契約期間等に変更が生じた場合は修正インボイスが必要となるため、複数年契約では契約変更時の処理にも注意が必要である。

・当社システムでの取扱い
 したがって、インボイス制度に「1年以内なら可、1年超なら不可」という基準があるわけではない。
 「ふくろう販売」では、通常は前受請求と売上計上を分けて管理し、前受請求書をインボイスとする必要がある場合は、契約内容や契約期間等を確認したうえで個別対応とする。
 特に複数年契約の場合は、契約書との組合せ、課税期間ごとの金額・消費税額の表示方法、契約変更時の修正処理等も含めて検討することが望ましい。

⑥個々の取引については、契約内容や経理処理等により取扱いが異なるため、ユーザの顧問税理士に最終判断を依頼する。

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