重機の手配・レンタル・修理を行うユーザから、レンタル業務を販売管理システムで一元管理したいという相談がありました。
従来はExcelを中心とした管理で、レンタル期間は1日から数か月まであり、商品によって日極・月極の料金体系も異なります。また、重機を1台ごとに管理する単品管理、Wレンタル、消耗品等の仕入・買掛金管理など、建機レンタル業特有の業務がありました。
そこで、建機レンタル業向け販売管理システムのふくろう建機レンタルを提案しました。
現在の「ふくろう建機レンタル」も、単品ごとの貸出・在庫管理、日極・月極による料金計算、複数月にまたがる継続請求など、建機レンタル業に対応した販売管理パッケージとなっています。
導入時はカスタマイズなし
この事例で特徴的なのは、最初から多くの機能をカスタマイズしたわけではないことです。
導入前のデモ・ヒアリングでは、修理履歴を一覧で確認する帳票なども検討しましたが、標準機能が業務にかなり適合していました。
そのため、2017年の当初見積ではカスタマイズ工数0人日でスタートしています。
販売管理パッケージを導入するとき、「念のため」「将来使うかもしれない」という理由ですべてを最初から作り込むと、導入費用が大きくなるだけでなく、実際には使用しない機能まで増えることがあります。
この事例では標準パッケージをベースに導入し、その後の実運用で必要になった機能を順次追加していきました。
実際に使いながら必要な管理機能を追加
導入後、最初に追加したのは請求書のカスタマイズです。
レンタルと整備について、それぞれの合計額を請求書上で把握できるようにしました。
その後、指定した期間のレンタル売上を予測する集計帳票を追加しました。現在貸し出している機械について、今後どの程度のレンタル売上が見込めるかを把握するための機能です。
さらに、商品マスタに複数の単価ランクを持たせ、得意先ごとに使用する単価を指定できるようにしました。
このように、日々の入力処理だけでなく、実際の運用に合わせて「請求」「売上予測」「価格管理」へと機能を広げています。
稼働率と回収率を経営管理に利用
さらに特徴的なのが、レンタル商品の稼働状況と投資回収を分析するためのカスタマイズです。
商品稼働率・回収率の集計表について、商品の種類やサイズごとに集計できるようにし、期間内の請求日数、稼働率、回収額、回収率などを確認できるようにしました。
建機レンタル業では、「いくら売上があったか」だけでは十分とは限りません。
保有している機械がどれだけ稼働したのか、その機械を取得するために投入した資金をどれだけ回収できたのかという視点も重要になります。
そこで、さらに投下資本回収率表を追加しました。
投下資本回収率表を追加
投下資本回収率表では、商品・単品マスタに分析に必要な項目を追加したうえで、任意期間について月別の売上額や償却費を集計できるようにしました。
償却方法についても、資料上では定率、定額、一括償却、少額資産に対応する仕様となっています。
また、任意期間の稼働率・回収率だけでなく、全期間累計の売上、稼働日数、回収率を確認できるようにしています。
その後さらに、複数の単品を指定した単品に集約して集計する機能や、月別売上・原価に対する回収率を月別表示する機能も追加しました。
単なる販売管理から一歩進んで、保有するレンタル資産の収益性を確認するための管理資料として発展させた事例といえます。
4.カスタマイズ一覧
| カスタマイズ区分 | 内容 | 参考工数 | 参考価格 |
|---|---|---|---|
| ― 導入時カスタマイズ ― | |||
| 導入時 | 標準機能を中心に導入し、当初カスタマイズなし | 0人日 | 0万円 |
| ― 導入後の追加カスタマイズ(導入後5年8か月まで)― | |||
| 請求 | 請求書に整備・レンタルの種別ごとの合計額を表示 | 2人日 | 約16万円 |
| 売上分析 | 指定期間のレンタル売上予測を集計する帳票を追加 | 5人日 | 約40万円 |
| 単価管理 | 商品に複数の単価ランクを追加し、得意先ごとに使用単価を指定 | 3人日 | 約24万円 |
| 稼働率・回収率 | 商品の種類・サイズ別に請求日数、稼働率、回収額、回収率等を集計 | 2人日 | 約16万円 |
| 投下資本回収 | 商品・単品情報を拡張し、月別売上、償却費、稼働率、回収率等を集計する投下資本回収率表を追加 | 9人日 | 約72万円 |
| 投下資本回収・追加改善 | 単品の集約集計、分類別小計、月別回収率表示等に対応 | 2人日 | 約16万円 |
| 合計 | 23人日 | 約184万円 |
導入時カスタマイズ:0人日/0万円
導入後の追加カスタマイズ:23人日/約184万円
カスタマイズ累計:23人日/約184万円(税別)
5.カスタマイズのポイント
この事例で参考になるのは、最初から23人日分のカスタマイズを行ったのではないという点です。
導入時には標準機能でスタートし、その約2年後から必要な機能を追加しています。その後も売上予測、単価管理、稼働率・回収率、投下資本回収率というように、業務上必要になった機能を段階的に拡張しています。
特に建機レンタル業では、売上金額だけを見るのではなく、
「機械がどれだけ稼働しているか」→「購入・調達した資金をどれだけ回収できたか」→「今後どの程度の売上が見込めるか」
という情報まで販売管理データから確認できれば、保有機械の管理や経営判断にも利用しやすくなります。
一方、導入時に要望があった修理前後の写真については、すべてを販売管理システム内部に作り込まず、別フォルダで管理する方法が提案されています。
「要望があるものは何でもカスタマイズする」のではなく、システム化するものと、別の方法で管理するものを分けることも重要です。
6.IT税理士・システム設計者としての視点
この事例は、パッケージシステムのカスタマイズ方法として参考になるケースだと思います。
販売管理システムを導入するとき、現在の業務をすべてそのままシステム化しようとすると、大規模なカスタマイズになりがちです。
しかし、標準パッケージで対応できる部分は標準機能を使い、企業独自の部分だけをカスタマイズする方法であれば、初期費用を抑えることができます。
そして実際に運用してデータが蓄積してくると、「このデータを別の角度から見たい」「稼働率を分析したい」「機械への投資をどこまで回収できたか知りたい」といった次の要望が出てきます。
今回の事例では、販売管理 → 売上予測 → 稼働率分析 → 投下資本回収分析へと段階的に発展しました。
最初から完成形を想定してすべて作り込むのではなく、標準パッケージで運用を始め、蓄積されたデータを活用しながら必要な部分を追加していく方法も、費用対効果の高いシステム構築方法の一つです。
7.注意書き
掲載している工数・価格は、この導入事例をもとに記事作成時点の基準で算出した参考値です。実際のカスタマイズ費用は、現在の標準機能、仕様、対象画面、帳票、処理内容、連携内容等によって異なります。
過去の事例では、導入当時はカスタマイズだった機能が現在は標準機能となっている場合があります。また、掲載価格は人件費・物価・開発環境等の変化により将来変更される場合があります。
正式な金額はヒアリング後のお見積りとなります。記載金額は税別です。 Astem